「とても幸せだった…」
この物語は、主人公のこのモノローグから始まる。
ゲームをはじめると、(主人公の名前入力の後に)真っ暗な画面に一行、「とても幸せだった…」と表示され、懐かしさを呼び覚ますオルゴールのような綺麗な曲が流れ始める。
それだけで――たったそれだけで、僕は胸を衝かれるように感じた。心の琴線に触れたと言うのだろうか。
「とても幸せだった…」
なんて美しい一行なんだろうと、今でも思う。
本編の前半は、日本の漫画やアニメにありがちなラブコメ風の雰囲気で進む。幼なじみの少女は毎朝主人公を起こしに来るし、転校生の少女とは登校中に曲がり角でぶつかる。ほんとに。
僕がこの「ONE ~輝く季節へ~」と言う作品が好きなのはその物語に大いに感動したからだが、この作品はそれだけではなく、話の前半、コメディ部分では大いに笑える作品でもある。この面白さは一流のギャグ漫画と比較しても遜色ないと思う。
主人公はのんびりとした、楽しい学園生活を送るのだが、異変はひそかに進行していた。今いる世界ではない、もう一つの世界が生まれていたのだ。空の向こうにある、「永遠」の世界。主人公は、「永遠」の世界が自分を今の世界から連れ去ってしまう事を悟る。
だんだん、この世界での主人公の存在は薄くなり、人々は主人公の事を忘れてゆく。学校の教師が、クラスメートが、そして家族すらが、主人公の事を忘れる。そしてついに、主人公はこの世から消えてしまう…。
主人公と、主人公が思いを寄せた少女はハッピーエンドを迎える事が出来るのか?それは、あなたが見届けて欲しい。
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